社長から「全権を委任する」という電報を受け取り、覚悟を決めてからのお話。

スエズ-ロバの牛乳配達

スエズ-映画館

◎ スエズ-その2

事務長の仕事

3年間の海外部で主に海外工事の入札や商社との交渉で主に中東・アフリカが担当だった。 海外工事で一番大きい工事はナイジェリアで90億円、中東ではヨルダン、イラン、イラク、クウェート、シリア、等それぞれ約20億円、エジプトは約19億円だった。 これらの工事代金受領時のレート変動をリスクヘッジするため、ドルの先物取引も仕事であった。 その他海外工事現場との連絡、当時は今のようにインターネットがないので「テレックス」という電報のようなものを使用し、緊急の場合は無線通信による方法も使用した。 海外部で営業担当を3年位してからエジプト工事の先発隊に事務長として加わり現地スエズに駐在することになった。 先発隊は5名で、私以外は海外工事経験者で技術者だった。 最初の1週間はホテルに泊り、工事事務所の設営やARENTO(エジプト電電公社)の担当者や地元スエズの電話局の担当者との打ち合わせなどでてんてこ舞いだった。 事務所と宿舎が決まってからは、食事や生活の準備に追われる毎日であった。

アラビア語

最初東京の本社では現地は英語で大丈夫との情報だった。 いざ、カイロ空港に到着後スエズの町に着いたら、英語はまったく通じない。まさにアラブの世界であった。 とにもかくにもアラビア語を覚えないと食事もできないしまして仕事ができない。とりあえず借り上げたタクシーの運転手を相手に模索しながら片言のアラビア語を覚えた。 1週間位するとなんとか買い物もできるようになり、1ケ月すると家の借り上げや従業員の募集、面接もできるようになった。

広範囲にわたる事務長の仕事

事務長の仕事は、事務所の設営・宿舎の借り上げ・食料の調達・コックやメイド・事務員・工事要員・運転手・医者の手配・日本人スタッフや現地人の給料の支給・工事資金の手配それに軍隊、移民局、税関、食糧事務所、電話局、などとの打ち合わせ、資材の調達などなど広範囲におよぶ。 一番重要な仕事は現場の人たちの安全確保のための情報収集である。 当時はレバノンに「日本赤軍」などゲリラ活動がさかんなこともあって海外工事での安全確保はとても重要であった。 幸い宿舎の近くにエジプト軍スエズ州の将軍が住んでいて個人的に交流があった。 最初はスエズ運河に沿った道は軍用道路で一般人の通行はできなかった。将軍に相談する機会があってこの軍用道路の通行許可を取り付けた。 ほとんど毎日のように現場の要員の給料を運んでいたのでスエズからイスマイリアへの80Km往復は砂漠の一般道路を使用するよりずっと楽になった。

軍隊と外注契約

そのうち工事が進むと大型爆弾や地雷が掘削現場から出てくるようになり、爆弾や地雷の処理を軍隊にお願いすることになった。 で、この時、将軍にお願いして軍隊と外注契約することになった。エジプトの道路は緊急時に飛行機が着陸できるようになっていて、舗装が4m位あってここを掘削するのは軍隊でないとできない。 おかげで作業困難な区間は軍隊が工事を進めてくれることになった。 同時に軍の情報ももらえること、いざと言う時に軍隊の力を貸してもらえることになった。

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